日本在宅透析支援会議


シンポジウム
腹膜透析普及の先遣隊SMAPの役割
演者:窪田 実 (貴友会王子病院 腎臓内科)
Dr.窪田 実
 腹膜透析の重大な合併症である経カテーテル感染による腹膜炎は、透析液交換デバイスの発達によって減少したが、細菌が皮下から腹腔に侵入する傍カテーテル感染による腹膜炎はいまだに多い。Readらは、電子顕微鏡による観察から殆どのカテーテルの表面にバイオフィルムが付着している事を発見し、カテーテル留置術に際しての細菌の皮下への侵入とバイオフィルム形成が、カテーテル感染症の主たる原因と報告した。このバイオフィルム形成の対策としてMoncriefとPopovichらは、カテーテルを腹腔に留置した後、出口を作らずに皮下に埋没し、後にカテーテルを皮下から引き出し出口を作製するという独創的な留置法を考案した。埋没期間中に完成する皮下とカテーテルとの間の組織的な癒合が、細菌の侵入に対するバリアーとして作用する。このMoncriefとPopovichのカテーテル留置術を用いて腹膜透析を段階的に導入する方法(Stepwise initiation of peritoneal dialysis using Moncrief And Popovich technique;SMAP)は、2,001年以来わが国において爆発的に広がり、導入患者の約20にSMAPが用いられている。
 感染予防対策として誕生したSMAPは他にも多くの利点を有する。SMAPを用いた腹膜透析の導入によって、段階的かつ計画的な導入が可能であり、このことは患者の精神的受け入れおよびQOLに大きく影響する。適正な時期に透析液リークの危険もなく、迅速に腹膜透析が開始できる。計画導入によって一時的な血液透析が回避でき、残存腎機能の長期維持が計れる。腹膜透析の導入に要する入院期間も極端に短縮する。このように、SMAPは導入周期の合併症を減少させ、腹膜透析の長期維持を達成し得る優れた方法であり、腹膜透析普及のdriving forceとして先遣隊的役割を担うと確信している。シンポジウムでは、全国のSMAP施行施設から寄せられたさまざまなデータを紹介し、SMAPの果たす役割について検討を加える。





シンポジウム
腹膜にやさしい透析液
演者:山本忠司 (白鷺病院)

仁真会白鷺病院 山本忠司、出雲谷 剛、奥野仙二、山川智之
Dr.山本忠司
 CAPD療法が導入されて20年が経過し、長期症例や腹膜硬化症の増加に伴って、透析液の生体適合性が問われるようになってきました。CAPDそのものは年間で約3トンもの晶質液を直接、腹膜組織に曝露させるという元々非生理的な治療法であり、しかも、この種の長期の侵襲に対する生体の反応については、我々は経験したことがなく、無知であったといっても過言ではありません。
 CAPD透析液における非生体適合性因子の認識は、pH、アルカリ化剤や浸透圧剤の問題からブドウ糖分解物(GDPs)、蛋白糖化生成物(AGEs)へと広がり、最近では、これらの因子を一部改善した中性透析液やイコデキストリン透析液が使用されるようになってきました。また、その有用性に関するデータも一部報告されています。しかし、生体適合性がよい透析液というのはどういうことか、真に腹膜にやさしい透析液はどういうことかという問いに対しての明確な答えや臨床的根拠は示されていないのが現状です。
 我々は、生体適合性の一つの評価方法としてCAPD排液中に剥離してくる中皮細胞の形態に注目し、その応用を考えてきましたが、最近になって中皮細胞の腫大と多核化という異型性が透析液のもつ非生体適合性因子、特に酸化ストレスと関連していることが明らかとなってきました。また、中皮細胞の大きさがこれら非生体適合性因子の程度を定量できることもわかってきました。
 今回のシンポジウムでは、中性透析液の生体適合性の問題について、どの程度改善されているのか、臨床評価はどうか、また、中性透析液がこれからのPDを普及させる源になりうるかなど、最近の知見をもとに考察したいと思います。





シンポジウム
イコデキストリン透析液は普及の原動力となる
演者:池上 匡
(バクスター株式会社 メディカルマーケティング部長)
Dr.池上 匡
除水不足は、腹膜透析患者が治療から離脱する最大の原因である。従来のブドウ糖透析液のみでは、長時間貯留、腹膜透過性上昇、残腎機能低下などの除水体液管理が困難となる状況に、充分な対応がしにくいことがその理由と考えられる。昨年本邦においても、非グルコース透析液であるイコデキストリンが腹膜透析療法における体液管理を改善する期待を担って登場した。その最大の特長は長時間貯留時の安定した除水効果にあり、さらに腹膜透過性に影響を受けない、ブドウ糖負荷量を低減させるなどのメリットもある。本講演では、イコデキストリン透析液の液体バランス維持効果に関するヨーロッパのデータを中心に、日本での使用結果も合わせて紹介する。また透析効率、糖脂肪代謝、腹膜、残腎機能に対する影響についてもふれるつもりである。現在の腹膜透析療法が抱える問題の多くを改善する可能性があるイコデキストリンは、これまでよりも腹膜透析療法を身近なものとし、より安定した透析生活をおくることができるようになる新しいルーツである。この新規透析液の出現が、在宅透析療法の柱である腹膜透析の普及の原動力になりうることを願っている。





シンポジウム
被嚢性腹膜硬化症の抑圧によりPDはさらに普及するか?
演者:中山昌明 (東京慈恵会医科大学 腎臓・高血圧内科)
Dr.中山昌明
本邦での腹膜透析(PD)の普及率は、日本透析医学会の統計調査によれば95年頃をピークに以後長期漸減傾向が持続している。それ以前までは順調にその普及率を高めてきたように見えるPD療法に冷や水を浴びせかけたのは、硬化性腹膜炎(SEP)または被嚢性腹膜硬化症(EPS)患者数の増加であり、それがPD普及を抑制した最大の原因であると考えている医療者が多いように思われる。しかしながら、EPSだけで、PDの普及抑制現象を果たして説明できるだろうか?この点を検討することは、今後、PDの健全な普及を達成するために極めて重要と考える。一般論として、EPSの発生がPD導入抑制に関わっていることは明らかであろう。しかし、この傾向はEPS発生施設のみならず、EPS非発生施設にも波及しており、医療者は心理的にPDを回避する行動機制に向かったと言える。この理由には、小生は、腎不全医療体系の中でのPDの適切な役割について、医療者間でのコンセンサスが確立されていなかった点が、このような崩壊現象を引き起こしたのではないかと推測している。その意味で、EPS現象の意味するところは、それまでの本邦のPD療法が抱えていた根元的な問題点をつきつけている点にあると思う。医学的にPDが果たせる社会的役割を認識し、それを強化することがPDの健全な発育のために必須であると考える。EPS対策は、そのために必要な基礎的条件であることは明らかである。すでに一万人近いPD患者を抱える本邦で、企業大学の研究者が生体適合性の高い製品開発努力を継続することは、社会的な責務であるとも言える。しかし、PD療法を真に本邦に根付かせるためには、EPSそれだけではなくEPS現象を克服することが重要と思う。





基調講演
これからの新しいHHD用透析機械
日機装株式会社 医療機器カンパニー
在宅血液透析プロジェクト
(はじめに)
昨今、在宅血液透析は、患者さんの生活の質(QOL)の向上はもちろん、治療効果の観点からも、より優れた透析医療としていっそう注目されている。一方で、多くの慢性透析患者さんが在宅血液透析を要望しているにも関わらず、在宅血液透析を実施している患者さんは2002年末でわずか100人程度であり、希望する患者数との乖離が非常に大きい。増加しない要因は多岐にわたるが、専用の装置がないこともその大きな一因となっている。そこで、当社では35年にわたり透析装置の製造・販売に携わってきた企業として、一人でも多くの透析患者さんが安心して希望する医療を受診できることを念願し、社内に在宅血液透析プロジェクトを発足し、専用装置を含めた総合システムの開発に着手した。

(開発のコンセプト)
在宅血液透析の普及を妨げている大きな要因の一つとして、患者さんおよび介助者の両者が感じる不安感があげられる。医師や看護師などの医療従事者が不在の状況で透析治療をおこなうことは、患者さんおよび介助者に大きな不安を与える。この不安感を出来る限り取り除くことが可能な装置およびシステムの構築を目指し、
「患者さんと介助者が安心できる在宅血液透析システムを提供する」
ことを開発のコンセプトとした。
 患者さんと介助者にとっての安心とは、下記の3点に集約されると考えている。
 1.安全であること(Safty)
 2.簡単であること(Simple)
 3.サポートが的確で迅速であること(Support)
この3点(3S)をサブコンセプトとして設定し、2005年末の上市を目指して、より具体的な設計仕様への展開、各要素技術の開発を進めている。最終的には、専用装置のみの開発ではなく、遠隔監視システム、物品等のインフラを含めた総合システムの構築と普及を目指す。





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